エンボス加工とは
エンボス加工は、紙、布、皮革、金属などの様々な素材に、凹凸を付けて文字や絵柄などを浮き彫りにする加工技術です。
非常に細かい文字から、手のひらサイズの立体的な模様まで、幅広いサイズに対応しています。
まるで彫刻のように、平らな面に立体感を持たせることで、より深みのある表現が可能になります。
また、紙以外にもプラスチックや樹脂に凹凸をつけるエンボス加工も存在します。
エンボス加工の特徴
素材を押し上げて凸状にする加工です。浮き出し加工とも呼ばれています。
最も一般的なエンボス加工で、文字や模様を立体的に表現することができます。
名刺やパッケージ、操作シートのボタンなどに多く用いられ、高級感や特別感を演出するのに効果的です。
エンボス加工は、製品に以下のような魅力を与えます。
立体感
平坦な表面に凹凸ができ、立体感が生まれます。
文字や模様が立体的に浮かび上がることで、視覚的な情報の訴求力を高めます。
高級感
凹凸が作り出す独特の質感は、商品に特別感を演出できます。
手触り
視覚だけでなく、触覚にも訴えかけることが可能です。
指で触れると凹凸を感じ取ることができ、触覚的な面白さを提供します。
現代の消費者は、単に機能性だけでなく、デザイン性や触感など、五感で楽しめる商品を求めています。
エンボス加工は、このような消費者のニーズに応え、製品に付加価値を与えることで、競合他社との差別化を図ることができます。
エンボス加工の歴史
エンボス加工は、古くから様々な形で人々の生活に溶け込んでいた技術です。
文字や模様を浮き上がらせることで、より豊かな表現を可能にしたこの技術は、時代とともに進化し、現代の多様な製品に利用されています。
古代から中世 ~手作業による表現~
紙幣の偽造防止
古代中国では、紙幣にエンボス加工のような模様を施し、偽造を防ぐ試みがされていました。
革製品の装飾
中世ヨーロッパでは、革製品に動物の模様や紋章をエンボス加工で施し、個性を表現しました。
本の装飾
手紙や本の表紙にエンボス加工し、豪華な装飾として用いられていました。
近代 ~機械化と産業革命~
活版印刷の発展
活版印刷の普及により、エンボス加工がより手軽に行えるようになり、書籍や紙製品の装飾に広く利用されるようになりました。
産業革命による機械化
エンボス加工機が開発され、大量生産が可能になりました。
現代 ~多様化する用途と技術革新~
パッケージデザイン
商品のパッケージにエンボス加工を施し、高級感やブランドイメージを高める手法が定着しました。
カード業界
クレジットカードなどに利用され、偽造防止に貢献しています。
技術革新
3Dプリンターなどの新しい技術の導入により、より複雑な形状のエンボス加工が可能になりました。
エンボス加工の仕組み
エンボス加工は、一般的に以下の方法で製作されます。
1.版(型)の製作
2.圧力と熱をかける
3.冷却と取り外し
1.版(型)の製作
エンボス加工には、凸版と凹版の2種類の版が使用されます。
凸版は模様を浮き上がらせるための型で、凹版は模様を凹ませるための型です。版は加工対象や求める仕上がりに応じて、金属、樹脂、シリコンなど、様々な素材で作られます。
2.圧力と熱をかける
素材を凸版と凹版で挟み込み、強い圧力と熱を加えてプレスします。
プレスすることで、版の形状に合わせて素材が変形し、模様が作られます。
3.冷却と取り外し
圧力と熱を加えた後、素材を冷却します。
素材が冷めたら版から取り外し、エンボス加工の完了です。
エンボス加工の種類
エンボス加工には、主に以下の2種類があります。
- エンボス加工(浮き出し加工)
- デボス加工(型押し加工)
エンボス加工の対になる加工法として「デボス加工」があります。
加工方法はエンボス加工に似ていますが、エンボスが表面を浮き上がらせるのに対し、デボスは逆に文字や模様を凹ませることで立体感を出します。
革製品や紙製品によく見られ、ロゴマークやブランド名などを、さりげなく表現するのに適しています。
また、素材の片面にだけ凹凸を付ける「片面エンボス」という方法や、素材の両面に凹凸を付ける「両面エンボス」という方法もあります。
デボス加工の特徴
素材を押し下げて凹状にする加工です。型押し加工とも呼ばれています。
デボス加工は、製品に以下のような魅力を与えます。
凹みによる立体感
表面が凹んでいるため、触覚的な立体感があり、深みを与えます。
上品な印象
浮き出たエンボス加工に比べて、より落ち着いた印象を与えます。
陰影の表現
凹みによってできる影が、文字や模様に奥行きを与えます。
耐久性
一度加工すると、凹みが消えにくく耐久性があります。
エンボス加工とデボス加工を比較
「エンボス加工」と「デボス加工」は、見た目が似ているため混同されがちですが、それぞれ特徴が違います。
そこで、両者の違いを特徴、表現、与える印象、使われるもので、それぞれ分けて表にまとめました。
エンボス加工 |
---|
素材を押し出して凸らせる |
立体感を強調し華やかさを出す |
立体的、華やか、高級感 |
カード、包装紙、革製品など |
デボス加工 |
素材を押し込んで凹ませる |
陰影を強調し深みを与える |
深み、重厚感、落着き |
革製品、紙製品など |
ちょっと変わったエンボス加工
エンボス加工やデボス加工に加えて、以下のような特殊なエンボス加工もあります。
彫刻エンボス加工
この加工方法は、素材に直接彫刻を施すことで、立体的な表現を可能にします。
木製品や金属製品などに用いられます。
こんなところにもエンボス加工が存在する
紙製品
- 名刺:ロゴや文字を立体的に表現することで、ブランドイメージを向上させ、高級感を演出します。
- 招待状:繊細で細かい模様をエンボス加工することで、特別な日の招待状にふさわしい華やかさを与えます。
- 包装紙:プレゼントの包装紙にエンボス加工を施すことで、中身への期待感を高めます。
- カバー:カバーにエンボス加工を施すことで、本の質感を高め、読者の手に馴染みやすくなります。
皮革製品
- 財布:エンボス加工を施すことで、独特の風合いと高級感を出し、長く愛用したくなるアイテムになります。
- カバン:オリジナルの模様を施すことで、デザインのアクセントになり、個性を表現できます。
その他
- プラスチック製品:滑り止めの効果やデザイン性を高めることができます。
- 金属製品:表面に立体感を持たせることで、高級感を演出できます。
- 食品包装:商品の魅力を視覚的にアピールできる他、「プラ」などの素材表示にも役立ちます。
- 機械の操作シート:ボタンの視認性向上など、作業の安全性に繋がります。
複合的な加工技術との組み合わせ
エンボス加工は、他の加工技術と組み合わせることで、より高度な表現や効果を出すことができます。
エンボス加工 + 箔押し
エンボス加工 + UV印刷
エンボス加工 + 箔押し
エンボス加工を施した部分に、金箔などを箔押し(ホットスタンプ)することで、メタリックな輝きがプラスされ、より高級感のある仕上がりになります。
エンボス加工 + UV印刷
UV印刷とは、紫外線で固まるインクを使用した印刷方法のことです。
エンボス加工で凹凸を付けた上にUV印刷を施すことで、立体感や奥行きを更に強調できるなど、エンボス加工単体では表現できないデザインが可能になります。
複合加工の活用事例
では、エンボスの複合加工は、どんな印刷物に利用されているのでしょう。その一覧を見ていきましょう。
名刺
会社名や名前をエンボス加工し、さらに箔押しすることで、相手に強い印象を残すことができます。
化粧品パッケージ
ブランドロゴを立体的に浮き上がらせ、そこにキラキラ輝く金箔を施すことで、特別感を演出します。
お菓子のパッケージ
エンボス加工で模様を付けると、指で触っても楽しいパッケージを作ることができます。
さらに、ホログラムの箔押しで商品名を目立たせることで、消費者の購買意欲を高めます。
グリーティングカード
エンボス加工で立体的な模様を施し、さらにUVニスで部分的にツヤを出すことで、華やかなグリーティングカードを作ることができます。
会社案内
表紙にエンボス加工と箔押しを施し、高級感を演出します。本文の写真に、UV印刷を施して光沢を出すことで、読み手の印象に残る会社案内に仕上げることができます。
商品タグ
型抜き加工で個性的な形に切り抜き、エンボス加工でブランドロゴを浮き上がらせることで、商品への注目度を高め、ブランドイメージも向上させます。
複合加工のメリット
デザインの自由度向上
様々な加工を組み合わせることで、より複雑で個性的なデザインを実現できます。
製品付加価値の向上
複数の加工を施すことで、製品に高い付加価値を与えることができます。
機能性の向上
エンボス加工と他の加工を組み合わせることで、製品の機能性を向上させることも可能です。(例:エンボス加工で滑り止め効果を持たせるなど。)
エンボス加工のメリットについて、さらに詳しく知りたい方は、下記のトピックをご覧ください。
エンボス加工するメリットとは?
複合加工の注意点
コストの増加
複数の加工を組み合わせることで、コストが高くなる可能性があります。
納期の長期化
複数の工程が必要となるため、納期が長くなってしまう場合があります。
技術的な難易度
複数の加工を組み合わせるため、高度な技術が必要となります。
エンボス加工を専門に行っている業者に依頼することを、お勧めします。
まとめ
エンボス加工の基本的な知識から、活用事例などを、幅広くご紹介してきました。
エンボス加工は、製品の価値を高めるための重要な技術です。立体感や質感を与えることで、製品の差別化を図ることができます。また、他の加工との組み合わせによって、さらに表現の幅が広がります。
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